リンダーウォール王国の末の姫シモリーンは、お姫さまらしくお淑やかにしている気なんてさらさらない。元気に剣術を習って止められて、魔法を習っては止められて、ラテン語も料理もやめさせられて、隣国のハンサムな(だけの)王子と結婚させられそうになり、ついに城でをくわだてた。
しかもカエルの助言に従って転がり込んだ先はなんと、ドラゴンたちの住む洞窟だった!
そのままおしかけの “囚われの姫” になったシモリーン。いそいそとドラゴンの宝物を片づけたり、助けに来た騎士たちを追い返したりしながら楽しくすごしていたが、なにやら胡散臭い魔法使いがあらわれて・・・?
設定からしてかなりツボ。こういうお姫さま大好き!
聞いたことのある昔話を所々で小ネタのように使っていておかしかった。シモリーンと仲良くなった、他の囚われの姫が、ワラから金の糸を紡ぐはずが木綿の糸しか紡げないし、ドレスとガラスの靴をもらったのに出かける前に割っちゃうし、ってぼやいてたり。英雄になると予言されてしまった王子さまが、英雄養成学校の他の生徒の、アーサーは石から何とかの魔法の剣をひきぬくし、ジャックはただ豆を育てるだけのつもりが魔法のハープを手に入れて巨人まで倒しちゃうし、って愚痴ってたり。
悪い魔法で眠らされたりドラゴンに捕まるお姫さまや、カエルになったりお姫さまを助ける王子さま、なんかが尊敬されるんだそうです。で、囚われの姫を持つのは、ドラゴンのちょっとした贅沢な嗜みなんだそうです。
美しくお淑やかであまり賢くないお姫さまが王道だけど、それとは逆の可愛くて賢くて元気のいいお姫さまは、そこから逆行するようにして派生してきたのかなぁ。男の人に都合のよさそうなお姫さま像から、女の子に喜ばれるお姫さま像が新たにでてきた印象がある。なんとなく女性の地位とか社会進出なんかと関わりありそうな・・・? 私が小学校くらいの頃だったかと思うんだけど、昔出版されたアリーテ姫もその頃、自ら道を切り開くお姫さま、みたいな感じで有名になってなかったっけ? (はっきりとは覚えていないけど)
でも個人的には本家のお伽噺でも、王子さまなんかよりも(仕立屋さんとかでなく、王子さま限定)、女の子たちのほうがよっぽど忍耐強くてしたたかな気がする。ラプンツェルなんて本当にたくましいと思うんだけど。幸せな結婚に至る過程だろうと何だろうと、それをのりこえた女の子たちはきっと、王子さまを上手に尻に敷くんじゃないかなぁ。
『囚われちゃったお姫さま ‐魔法の森1‐』 パトリシア・C・リーデ (著)
田中亜希子 (訳) 橋賢亀 (絵) 東京創元社 2008年6月